ゆるゆるメモリーズ

22歳、なんとなく思ったことをゆるゆると。

湊かなえ「サファイア」

 

 

こんにちは、センです。祝!初ブログ!

 

昨日、湊かなえさんの「サファイア」を読了いたしました。

 

湊かなえさんの作品は、語り手の主観やエゴの人間臭さがクセになりますよね!

様々な作品を読んでいるにもかかわらず、毎回ラストが予想できず登場人物全員を疑ってしまいます(笑)

きっと、湊かなえさんの思うツボですね。

 

今回読んだ「サファイア」は宝石に関わる7作品の短編集です(サファイアとガーネットは2つで1つの作品とも言えます)。

 

  1. 真珠
  2. ルビー
  3. ダイヤモンド
  4. 猫目石
  5. ムーンストーン
  6. サファイア
  7. ガーネット

 

短編集は区切りよく読めるので、電車で読むのにもってこいですよね!

 

 

ところで、皆さんはあとがき・解説を本編より先に読む派ですか?後派ですか?

 

私は先に読む派です。完全なネタバレではないけど、ギリネタバレ…?くらいの温度の解説を読み、(面白そうだな)と思って初めて本編を読み始めます。

完全な結末は知りたくないけど、全く物語を知らないまま読むのも嫌なんです。だから原作のないドラマやアニメも苦手です(笑)

 

話が脱線しました。「サファイア」についてです

 

タイプの異なる7つの作品は、個々に煌めく宝石のように、どれも個性的で面白かったです。湊かなえさんを「イヤミス」の女王だと思っている方(事実ではありますが)にとっては、新鮮な作品もあると思います。

 

以下、それぞれについて、個人的感想です。

 

【真珠】

たぬきのような顔の女と男の対話によって進められる物語。2人の関係性は後半までしばらく明らかにされません。だんだん明らかになっていくとともにドキドキが増していく、これぞ湊かなえ!といえるお話でした。

相変わらず、主人公(語り手は男だが話の主人公は女)にはもちろん、男は初恋の思い出を再会した妻に投影しているように思え、エゴもひどく感じて全く共感はできませんでした(笑)今後の全てが不穏に思える終わり方が2人には合ってると思います。男が若干女に共感できているのも気持ち悪いと思いました。

 

【ルビー】

1番好きな話。

以前のたばこ畑、今の老人ホームに住む「おいちゃん」と、近くに住む家族の話。

久しぶりに帰省した出版社に勤めるお姉ちゃんと、家族と暮らす妹の会話から、予想だにしなかった事実が明らかになる。

世の中には知らなくていいことがもちろんあって、それを知らせないっていうのも優しさだなと思う。私はおいちゃんを憎めなかったな〜、あとお姉ちゃんが、妹が園田くんのこと好きなのを話し方からなんとなくわかってたって言うところ、読者にも伝わってくるから、描写上手いな〜って感心した。(上から目線)

 

【ダイヤモンド】

鶴の恩返しみたいな、助けた雀によって知りたくもない事実を知る男の話

まあ最近の事象で言うと、悪質なパパ活とかが近いのかな?騙してお金もらって、それをまた他の人に貢ぐ負の連鎖。女は自分がどう振る舞えば美しく見えるのかもわかってて、狡猾だな〜と思った。私もこういうあざとくて狡猾な女になりて〜とは常日頃思ってるけど、オッサンと喋るのはマジでムリ〜!というタイプなので、これができる女はマジで尊敬しています。

ところで、このお話は雀が人間になって期限つきで恩返しをするというお話ですが、私は湊かなえさんの作品テイストにしては、このファンタジーさは珍しいな、裏があるのかなと思い、個人的な結論として、主人公自身が真実を自力で暴いたものの、受け入れ難かったために雀に責任転嫁した、精神的に参ってしまった男の話だと思いました。登場人物全員が報われませんが、いいラストだったと思います。

 

猫目石

側から見たら円満な三人家族、それぞれがもつ家族に言えない秘密が、隣人さんに暴かれる話。家族三人それぞれの視点で物語が進んでいくが、それぞれ暴かれたくない秘密、それがあるからこそお互いの行動から勘ぐってしまうという、思いが交錯した湊かなえ感あふれた作品です。

パパが中野さんから強請ってお金をもらっている、と考え、自分の秘密がバレている!と思い込む果穂ちゃんのシーンですが(バリバリネタバレ)、それこそ湊かなえさんが狙ったミスリードではないかと思いました。中野は全くの別件でパパと接しているのに、自分に後ろめたいことがあるから自分にとって都合が悪いように勘ぐってしまうのでは…?という…。

何が真実かはわからないし、正解がないからこそ自分なりの解釈ができる、小説の醍醐味ですよね。

結果的に?家族はお互い打ち明け、平和に暮らしていると言えるのでオッケーです(^^)v

 

ムーンストーン

湊かなえさんが描く女の友情の大半がドロドロしているため、この作品はここまで素直に友情を味わって良いのか?と不安になるくらい、少女時代の2人は輝いて見えました。地方の田舎を舞台にした、地元の友情のお話。友情は無敵だと思うことができました。DV旦那、気持ちはわかるけど母娘に手を出してはいかん。だし、男の人に女の人がモノ無しで敵うわけがないやん!と叫びたかった〜!DVはダメ!絶対。そして何でも相談できる相手を持っておけ!と胸に刻みました。

 

サファイア

表題作です。女の、最初で最後のおねだりに絡んだ悲劇。何かに理由を押し付けたくなるようなことが起きたときに、それにちょうどいい事実が判明しちゃって、そう思い込んじゃうっていう話。この作品は良くも悪くも誰が悪いとは言えないところがモヤッとするけれど魅力的。

本題を逸れれば、バイトに誘ったタナカは悪いかもしれないし、悪質と知らずとしてもそのようなアルバイトをしていた修一も悪いかもしれないし、誰かのせいだと思い込む真美も悪いかもしれない。でもそれは直接の原因とはならない。直接的な原因がないからこそ、各々が罪悪感を抱えている。

 

【ガーネット】

サファイア」の主人公が出版した本の映画化に伴って企画された、雪美と対談の中で新たな事実が判明する話。タナカは雪美にポストカードを送っていて、もはやラブレターで、二人は両思いなのに、罪悪感からかタナカは距離を縮めない。真美は、過去のことを引きずっている人が自分以外にもいると初めて気づいたのではないか。そして雪美を通して、タナカに激励の言葉を送る。

後日、編集者から受け取ったファンレター、開けない方がいいと前置きがあったため、(もしや救われない内容なのでは…?)と思ったが、これがもう感動もんだった。

彼が語る真美は可愛らしくて、大変愛していることが伝わってくるし、書き手の方の指輪の捉え方も素敵だった。

ファンレターのおかげで真美が過去を受け止め、やっと前進できるような気がした。

 

 

長くなりました…、どれも短いのに読み応えがあり、良くも悪くも人間臭くて大満足でした!最近長編小説ばかり読んでいたから余計に、短編でこれほど満足感を得られるってすごい!構成力!表現力!すごい!と思います(安直)

 

 

それでは。